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ダン・ブラウン 「インフェルノ」☆☆☆ [本]

謹賀新年。

年をまたいで、楽しみにしていたインフェルノ、読みました。
新年から地獄もどうかなと思いましたが、面白かったですよ。タイトルは謎解きのガイドとなるダンテの神曲の地獄篇からとられています。

今回、主人公のラングドン教授を窮地に陥れるのは、狂信的な科学者です。マルサス主義、トランスヒューマニズムに傾倒し、遺伝子工学の権威。マルサス主義に基づき、黒死病ペストを引き合いに出して、人口爆発が人類の滅亡につながるから。。という一見過激な理論を唱えています。こうなると、何が起こるか、大体想像できるかと思いますが。。

舞台はまた欧州に戻り、ヴェネツィア、フィレンツェ、そして。。。
これらの美しい古都の文化遺産、有名な観光名所の不思議なからくりや、街のあちこちの描写がたっぷり盛り込まれています。欧州好きな方、旅行された方にはたまらないこと請け合いですし、行かれたことがない方でも、映画を待たずともネットで地図・映像散歩をしてみれば絶対に楽しいと思います。

それに、いつも通りプロローグに記載された、この小説に登場する芸術作品、文化、科学、歴史に関する記述は全て現実。。。との宣言。全てが正しい事実ではないという厳しい指摘もあるようですが、またまた、ちょっと人に話したくなる薀蓄が幾つも入っています。

例えば、ペストを予防するためにヴェネツィアがとった外国船の海上検疫、隔離措置が40日間であったことから、検疫を意味する英語はイタリア語の40からきている。何でかなあとは思っていましたが、そうだったのね。と納得。

古い少年少女の恋愛映画リトルロマンスで出てきた、ため息橋の命名は、実は全然ロマンチックではなく、ドカーレ宮殿から隣の監獄に送られる際に囚人が最後に美しい街を橋の上からみて、ため息をついたからというところから。などなど。

ラングドン教授の冒険譚も回数が増え、段々前ほど面白くないとのレビューもあるようですが、普遍的なテーマを選んで、エンターテイメントとして1級品に仕上げるところは、改めてすごいなと感服しました。それと、今回は悪役科学者が心酔するダンテの神曲の引用が沢山あり、今までの作品よりも文学的要素が強いですが、引用箇所以外にも、芸術的文学的な表現が増しているように思え、それが新しい一面ではないでしょうか。ストーリーにも工夫がみられ、どきどきハラハラは間違いありません。

ただし、今回の人口増加というテーマは深刻です。人口増加が人類を滅ぼすというだけであれば、多くの方がうなずくと思いますが、ペストと同じく3割の人口を減らすためには、高齢者や余命わずかな人の延命、不妊治療は必要ないとまで言い切られると、迷ってしまうのではないでしょうか。

エピローグはこれからどうなってしまうのかという思いを残していますし、理系の方が科学的見地からこの小説を読むと、幾らリサーチ・検証された上での刊行だとしても、多分厳しい指摘がますます増えそうな気はします。日本にいると少子化が叫ばれているため、人口増加について現実問題としてあまり意識されていないのではないでしょうか。けれど、地球規模で考えると、この小説の登場人物が述べるように、看過できませんので、今作でもベストセラー作家になっているダン・ブラウンが警鐘を鳴らす役割をになったのかもとも考えられます。

さて、今年は午年ですが、今回の謎解きの途中では有名なサンマルコの馬が出てきました。
フリージアン種という馬がモデルだというギリシャで作られたブロンズの4頭の馬は、その美しさ故に、数奇な運命を辿ったとのこと。ギリシャからコンスタンティノープルに持っていかれ、次は、十字軍のコンスタンティノープル陥落により、輸送のために頭を落とされてヴェネツィアへ。そしてまたナポレオンによってパリの凱旋門へ。失脚により、再びサンマルコ寺院のファサードへ帰ってきたそうです。(今はレプリカ)サンマルコに行った際に見たのか見てないのか、私の記憶は全くあてににならないのですが、検索して写真を見てみると、確かに美しい馬です。4頭の馬ですと、おそらく軍事関連の施設用に士気高揚のために元々は作られたのではと推察しますが、それにしては、美しすぎる造形です。

私の周りでも小説を読む人は減っているようで残念ですが、ダン・ブラウンの作品はいつも新しい興味をかきたててくれる楽しい贈り物です。前作「ロスト・シンボル」の感想で次は環境問題もありえるかもと書きましたがハズレではありましたが。
今回は大機構とは???のクエスションマークで私の頭はずっと一杯です。誰かご存知の方がご教示くださらないでしょうか。

写真は毎年祖母にもらう八幡様の干支の土鈴です。
お花は毎年適当に生けますが、今年は餅花も。枝ぶりがうまくおさまらずあちこち向いていますが。母によると昔は手作りして部屋のあちこちにつるして飾ったそうです。できれば水盤にきちんと華道のルールにそって活けこみもまたしてみたし。でも、水盤保管する場所がないんですよね。

皆さまにとってこの1年が佳き年になりますように。

追伸1月20日:ダン・ブラウンがFBで今プラハの町の写真をやったらアップされています。もう1度行きたい大好きな町No.1です。次の舞台になればいいのに。。
追伸3月19日:インフェルノで検索されているようで、この記事の閲覧数がものすごく増えているのに気づきちょっとびっくりしました。ダン・ブラウンの本の感想は前にも載せています。左の検索窓から検索すれば一気に出ますので、ご興味あればどうぞ。
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whitered

tamaiichiさん、明けましておめでとうございます!ダン・ブラウンの小説面白そうですね。私は最近は軽めのものばかり、高田郁や有川浩、葉室麟、冲方丁の小説を読んでいます。お花も若々しくて素敵です。今年もよろしくお願いします。
by whitered (2014-01-06 14:44) 

tamaiichi

コメント欄、設定がよくわからなくなっていましたが、やっと書き込めました。
有難うございます。
またブログ拝見させて戴きます。
今年もよろしくお願い致します。
by tamaiichi (2014-01-09 00:46) 

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