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「ブラックボックス」篠田節子 [本]

篠田節子さんの今回のテーマは食の安全です。

主人公は田舎町の同期の30代の3人。挫折して故郷に帰り、深夜のパートで食品工場で働く女性と、これからの農業に取り組む若い農家、学校の栄養師。

簡単に説明すると農家が作ったハイテク農法の野菜がその食品工場で加工商品化され、学校の給食に使われ、子供の病気が増えて栄養師が気づき、3人がその問題の解明に奔走するというストーリー。
その過程で郊外の田舎町の様々な顔や、工場で働く外国人労働者の問題、日本の農業の過去と未来、広く言えば世界的な食料問題について掘り下げています。

かなり綿密な取材に裏打ちされたであろうことは間違いない、読み応えたっぷりの面白さです。
ただ、今回は主人公の女性のキャラクター設定に無理があったような気がするのと、最後の顛末が少ししりすぼみな予定調和な感じがしました。

何もかもトレイサビリティを求められて、製品データを誰でもネットで手に入れられるような、ある意味厳しい日本の食。むやみに恐れても仕方ありませんし、加工品を全く食べないわけにもいかない。
できれば新鮮で安全であろう材料を自分の手で調理して口に運ぶのが一番良いのはわかっているけれど。
私自身も職場でのランチはコンビニばかりです。生野菜などは避けているので、余り買ったことはありませんが、デパートでは買うことが。

現行の法規制からもれる添加物があるというくだりはリアルであり得る話です。
けれど、食の安全の監督官庁であろう日本の農林水産省と厚生労働省を信用しないと仕方ないかなと思いますし、諸外国より厳しい面もあるとは思うのですが、いかがでしょうか。。

出てくる登場人物の皆が黒と言い切れるわけではなく、それぞれ理想を追いかけているのに、そこからもたらされる結果が良くないというところが、一番怖いかなと思いました。食の流通、安全の問題は難しい。著者は消費者側にも疑問を投げかけているのではないでしょうか。

登場人物の中で私が一番共感できなかったのは、栄養師の女性。
反対に最高に面白いキャラクターだったのは、仕事は出来て工場を仕切るのに、ひどいセクハラおやじの片岡です。
一読をお勧めします。
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