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「アスクレピオスの愛人」 [本]

林真理子さんの去年の小説。WHOで働く日本人40代後半の女性医師が主人公。美貌で離婚していて、好きな時に好きな人と付き合い、世界を舞台に仕事をする魅力たっぷりな主人公と、彼女を取り巻く男性とそのパートナーや家族の人間模様に現代の医療を絡めて描いた小説です。

主人公が傲慢すぎて共感できないという感想が多いようなのですが、私は最強の主人公だなと思いました。もしかしたら、作者の理想の女性かなと。これがもう少し控えめで有能できれいな普通の女性だったら、この小説は成り立たないし、全然面白くないのでは。

また、色々盛り込みすぎて軽いというコメントも多いですが、これはこれで、面白いかと。確かに、林さんなら、もっと主人公の心情を掘り下げ、医療面についても、もっとシビアに書き込めば、重みのある本格小説という感じにも仕上げられたとは思います。けれど、エンターテイメント性に重きを置くことに決めて書かれたのではという気がします。

登場人物が多いために、主人公の印象が薄れているかも知れませんが、それぞれの心情の機微の描き方はとても巧いし、娘のキャラクターも際立っていました。一人若い男性医師の設定はいまひとつだったように思いますが。

医療に関してはどこまで真実に肉薄しているのかはわかりませんが、医療過誤や不妊治療以外にも日本の医療の現状をかなり盛り込んで描かれていて、丁寧な取材に裏打ちされたものだろうなと思います。裏話的なエピソードも面白かったです。

日本以外に主人公が仕事や旅行で訪れるアフリカの現場やアジア、ジュネーブ等の情景描写も楽しめました。
最後が唐突というのもありますが、何だか続きも描けそうな終わり方。

実際にWHOで活躍されている日本人女性医師の方がいらっしゃるようで、主人公が医師になった動機もモデルにされているようです。

アスクレピオスは医療の神。杖に絡まる蛇がWHOのマークで表紙になっています。巳年に読む最初の小説にしてふさわしかったかも。おすすめです。

また色んな分野の話を読みたいなと思いました。
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乳がんについての本。「乳がん転じて美乳になる方法 おっぱいをつくる!」田中ひろみ [本]

1週間に1度は更新しようと思いながら、あいてしまいました。。
今年の大阪の梅雨は降ったりやんだり、なんだかせわしない季節です。今日も日が差したり、豪雨みたいだったり。

イラストレーターの幼馴染が出した本ですが、良い本だと思うので、紹介。
昨年乳がんを患って両乳房を再建した体験記です。

関東に住んでいるのに、しょっちゅう関西にも来るし、いつもあちこち飛び回って忙しそう。
昨年も全然変わらずで、会ったときにも、病気のことは聞きませんでした。話せなかったそうです。
それで、この本を出したというのを教えられてびっくり。

誰もが抱きそうな素直な疑問が、要領よくまとめられているので、心構えの入門書として読むにはぴったりかも知れません。
女性なら乳がんについて少しは考えたことがあると思いますし、嫌ではあるけど身近な病気だから。私自身も毎年検診を受けているし不安。生検をしたこともあります。

家族とのやり取りもありのままに書いているので、読んでいると、つらかったんだろうなあと思って、不覚にもちょっと涙が出てしまうところも度々。。でも、決して暗い仕上がりにはなっていません。本人の性格もあると思いますが、素直に、時には笑いながらの体験記で、気軽に読めました。

表紙は再建の方にポイントをあてて、イラストもちょっと大胆ですので、男性の方はひいてしまうかも知れませんが、なかみはそれメインではありません。もし身近に患者さんがいるなら、読んだら気持ちがわかる本だと思います。
知りたい情報もよくまとめられていますので、お勧めです。
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篠田節子「はぐれ猿は熱帯雨林の夢をみるか」☆☆☆ [本]

読書メーターと連携してFBにコメントを書いてしまっているので、あんまり同じことをあちこちに書くのもなあとも思いましたが、これは余りに面白かったので、紹介。

有名SF作品などを意識したタイトルと内容。みたいです。内容はSFではないと思いますが、一応SFに分類されているようです。
時事・科学絡みがテーマの短編集。けれど、全然難しくないです。最初から最後まで、面白くて一気読みです。

私が1番面白かったのは、1編目の”深海のEEL”即ち鰻です。
レアメタルや食品加工を題材にしていますが、なんてうまくまとめちゃったんだろう~。とその手腕に脱帽。笑いどころ、満載です。

今年はますます鰻の価格高騰・品薄が言われていますが、この作品を読むと、う~ん。とうなってしまうことと思います。他の作品もどれも楽しい。

女性作家は余り読まないという男性の方にもお勧めです。
初めての方にも入門書にぴったりです。



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最後のスペンサー 「春嵐」 [本]

今までにも何度か書きましたが、ロバート・B・パーカー作、アメリカはボストンが舞台のハードボイルド物のスペンサーシリーズが大好きでした。子供の時から。

作者が亡くなられたのは知っていましたが、39作目という、この最後の1冊が去年とっくに出ていたのに全く気つかず(何で早川からお知らせメールが来なかったのか。。。)。。図書館のお勧めコーナーにあるのを発見して拍子抜けしましたが、遅れてやっと読了です。

相棒ホークが出ていないのが残念ですが、パール、スーズ、それにクワークも出てきます。
そして新メンバーのインディアン系タフガイも登場。原作ではタイトルがその名前。
今回スーズ、スーザンが事件の謎についてちょっとしたヒントを発言しているのが、目新しいような気がしました。
悪役を含めた登場人物たちのキャラクターの掘り下げ方は、いつも通り巧くて、ちょっと苦い思いがするところもあり。

何十年読み続けたのに、もうオリジナルのパーカーで読めないのがとても残念です。
暇なときにぽつぽつ読み返してみようか、1回くらい原書を読んでみようかとも思います。
何回か映像化もされているようだけど、イメージ通りかどうかは不明。でも見てみたい。

一緒に読み続けた母以外、こういう系統を好きな人は女性でも男性でも私の周りには全くおらず、語れないので、ちょっともやもやですが、パーカーに感謝。
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ララピポ 映画&本 [本]

奥田英朗の原作を読んで、映画になってるんだと知って、やっと鑑賞。

ララピポはA lot of peopleの意味。
東京・都会・日本・世の中には色んな人間が色んな風に、あるいは一生懸命生きているんだなあというお話。
登場人物が少しずつ絡み合って、短編で構成されていて読みやすし。

映画ではぐっと圧縮され、設定が変更になっている部分もあったし、本のイメージと俳優がぴたりと来ない感じの人もいたけれど、ある意味面白かった。
この方の本は映像にしてみたいなあと思わせる躍動感、世界の広さ、エンターテイメント性があるからかも。

かなりエロ系のお話を含むので、敬遠する方もいらっしゃるかもしれないけれど、扱っているテーマは深し。

映画の主人公はある意味ポン引きマネージャー役の成宮君で、あまりの魅力的な笑顔にイチコロになりそうでした。可愛すぎはまりすぎ。それだけでも女性は見る価値あるかも。

追記:今やたらCMやってるGIRLも奥田さん原作ですね。読もうかな。
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奥田英朗「我が家の問題」 [本]

この方の本は、長編犯罪小説の「最悪」がすごく面白かったです。
他には「家日和」。今回読んだのが3冊目です。

6つの短編集。さらっと読めて、共感できて、後味が良い。という小説です。

妻が知らない夫での会社の姿、子供が知らない両親の不仲、夫が知らなかった妻の孤独、ぎくしゃくする夫婦関係、親戚との付き合い。どこにでもありそうな、けれどある意味深刻な家族の問題がうまく収まって短編になったという感じ。
私が特に印象に残ったのは、子供が主人公の絵里のエイプリルでした。

元々の経歴を読むと、ああ~。そういう方が書きそうな感じの小説かなとも思います。
主人公は女性だったり、男性だったり、子供だったりしますが、どの主人公についても、非常に巧く人物像が作られていて、1人暮らしだという男性が、どうしてこんなに女性について巧く描けるのかなと不思議に思うくらいです。

人間観察眼がすごいと小説家の方について言うのは失礼かも知れませんが、本当にすごいなあと思いました。心の内面の描写もですが、状況描写が丁寧だからでしょうか。

いくら描写が上手な大作家・有名作家の小説を読んでも、現代を舞台にしながら、古臭くて現代ではないなあと思う場合があり、首をひねって疑問に思うときがあります。
けれど、この小説は、作者の感覚・アンテナは鋭くて、センスが良いのだろうなあと思わせます。
現代人の生活の1シーン1シーンが文字にして切り取られた感じです。

もっと他にも読んでみたくなりました。気軽に読めてお勧めです。
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エルマーとりゅう [本]

年末年始の5日間の休みはほとんど自分ちにいなかったので、ちっともゆっくりできなかった気が。。
今日から仕事で、帰りに服を買おうとバーゲンに行きましたが、気に入ったのが見つからず、さんざんうろうろして、余計にぐったり。。

辰年というので思い出して実家で探した エルマーとりゅう シリーズの 大好きだった本。
かなり痛んでいますが、ありました!

改めて目を通しても、長年売れ続けているのがわかるお勧めの本です。自分で読むなら小学校低学年からでしょうか。
子供が夢中になる冒険ストーリーということだけでなく、随所にユーモアが感じられてほのぼのします。
それに、挿絵が秀逸です。可愛らしいだけでなく、写実的で、色んな動物の絵は本当に楽しめます。

それにしても、今読んでも私が一番好きなのは、子供の時と同じく、ライオンが三つ編みされるところと、りゅうの一家がずらっと並んだところです。これって私はちっとも成長してないってことかしら。

辰年にお子様たちへのお年玉プレゼントにお勧めです。

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「ユニクロ症候群(シンドローム) 退化する消費文明」小島健輔 [本]

ちょうど1年位前に出た本。

ユニクロ栄えて国滅ぶ?とのコピー。確かにバブル以降の失われた20年は、日本経済の衰退と共に、ユニクロの発展があったとは言えるみたいだけど。

ユニクロ、H&M、ZARA、GAP、GIORDANO、無印良品、FOREVER21等のファッションブランドについて分析するだけではなくて、マーケティング、経済について、結構わかりやすく書かれていて面白かった。

著者が引用していたけれど、ユニクロの柳井氏自身が、洋服をファッションではなく、単に生活パーツとしてとらえれば、もっとマーケットは拡大するというような事を自著で語っていたらしい。
確かにそこが、ユニクロ。だった。ユニクロにセンスやファッションを求めても仕方ないというか。
おしゃれな人は、安くて便利だから家着にはしても、外にはあまり着ていかないし、1シーズンでくたくたになるし捨てちゃうというような人も。
読んでいて各ブランドの話で、ふーんと面白かったのは、FOREVER21は韓国系米国人が始めたブランドっていうことや、ZARAのシステムはトヨタの協力があったとか、なるほどなあのエピソード。イオンについては、著者が述べている通り、このシーズンもまだユニクロを追っかけている。

ただ、ZARAについてファストファッションと括られているが、それは違うというのは納得できるけれど、一概に品質が良いというのは、ちょっとどうかなあと思う。ZARAにも色んなラインがあるので、私の買うライン・服が安いからなのかも知れないけれど、縫製は駄目なことが多い。こないだ初めて買ったH&Mの990円のブラウスの方が良かったくらい。けれど、自社で染色や生地についてもこだわっている。という点は大きな違いかも。

また、今の若者世代について、デジタル情報というのはアナログ情報と違って、ぐっと圧縮された少ない情報であり、その中で育った彼らの感性、知性、向上心は退化していて、収入減がそれに拍車をかけている。というのは同意するけれど、デジタル世界の可能性についても認めないと仕方ないかなあとは思う。

ユニクロはファッションというものを志向していなかったのだろうけれど、ジル・サンダーとの提携以降、一体何を目指してるんだろうか。それに今は更に低価格のジーユーGUのテレビCMをバンバン打っている。

大阪のアパレルのマーケットを言えば、そごう後の大丸北館はUFUFUフロア以外はどうなのか。それ以上に、鳴り物入りで進出してきた大阪駅の伊勢丹は、既に人がまばらな気がするけれど、どうなるのか。

ファッションブランドに興味のある方にも、マーケティングに興味のある方にも、面白く、さっと読める本です。
この秋からはスカート丈はちょっと長めも流行るらしい。
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「統ばる島」☆☆☆ 池上永一 [本]

沖縄出身のお気に入りの作家、池上永一さんの本。すばるしま。

八重山の竹富・波照間・小浜・新城・西表・黒島・与那国、そして親島とも言える石垣の島々の、それぞれを背景に摩訶不思議なストーリーが繰り広げられる短編集。

どこまでが現実なのか、どこまでが神のなす業なのか、この世はやっぱり自然を介して、別の世界とつながっているのかなあとも思える。でもそれが池上さんが描くと、変に怪し気なスピリチュアルでもなく、日常生活・人生の中で、人間はごく普通に何かに生かされてるのだなあと納得できる。

特に私が気に入ったのは、竹富と黒島のストーリー。圧巻の面白さ。
読んでいても、主人公たちのセリフが沖縄のイントネーションで頭に響いてくる感じ。

舞台となっている島のうち、波照間はしり込みして行っていない。与那国は行きたいけれど、まだ行けていない。
今年は沖縄に行けそうにないから、せめてこの本で沖縄気分。

八重山好きの人には絶対読んで欲しいし、沖縄離島に行ったことのない人にもお勧めの1冊です。
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小池真理子「KISS」他 [本]

三島由紀夫が好きで、愛と死とエロス?を描く小池真理子さんの短編集。
一番気に入ったのは、昼休みにハンバーガーを頬張る隣の部署の上長の白い歯に惚れてしまうOLのストーリー。何だか恋の当事者の主人公はさばさばしていて、こんなこともあるかなあ。身体のどこか一部分に惹かれるってあるのかも知れないなあと。

作品数が多くて、正直、最近長編を読んでも、どれがどれかわからなくなってしまうような気がするので、あえて選ぶと短編もしくはミステリーがかった昔の作品の方が好きかも知れません。

けれど、小池真理子さんというと真っ先に思い出すのは、仙台が舞台の「無伴奏」。学生運動が盛んだった高校時代を仙台で過ごされて、実在したクラシック喫茶店の名前がタイトル。
私の中では行ったことのない仙台のイメージはこの小説によるところが大きいかも知れません。
あまりにつらい、けれどみずみずしい若さと感受性の時代を描いた小説で、小池さんといえば、最初に読むべきお勧めかなと思います。
お父上の転勤が多かったせいで関西でも暮らしたことがあるようですが、関西舞台の話はあったでしょうか。

恋愛がテーマのことが多く、多分男性は手をのばすことがない作家かも知れませんが、心の痛み というものをとっても丁寧に、キリキリするくらい描かれるのに、うーん。とうなりたくなります。

それと、なぜかどの小説も登場人物はきっと美男美女に思え、宇野亜喜良さんの絵がぴったりな気がします。
時間があってとっぷり小説にはまりたいときにお勧めの作家です。
(短編は普段からどうぞ)
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